未来へのモノ-ガタリ(20):ライン - 野中
2025/05/06 (Tue) 07:28:32
ケイ(K)は一人でセンター・オブ・ジ・アースの待ち列に
並んでいました。ユウ(U)と一緒に来るつもりが、
ユウの仕事場で、突発的に用事ができ、
ケイは仕方なく一人で来たのです。
ケイは暇だったのでユウにラインを送りました。
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K「いま、センター・オブ・ジ・アースにならんでるよ」
U「うらやましいな。あたしはようやく仕事おわったとこ」
K「じゃあ、今からでも来る?」
U「うーん、でもやめとく。疲れたよ。帰って寝とく」
K「じゃあ、このあと2万マイルに乗って、すぐ帰るよ」
U「ふうん」
K「ねえ・・・・・・変な話、してもいいかな」
U「ええっ、・・・まあいいけど」
K「ええと・・・・・・怒らないで聞いて欲しい」
U「何それ、あたし怒るの?」
K「いや・・・・・・・そうだ。僕にとって確実なことは・・・・・・」
U「あたしを好きだって言う事?」
K「そう。僕はきみが好きだ。宇宙がどうなってもそれは変わらない」
U「・・・・・・わかった。じゃあ話して」
K「高校生のころさ」
U「ちょっと前なのね」
K「僕は一人の女の子と裸で寝ていた。その子に関わり出したのは向こうから声を掛けられてからだ」
U「裸で寝るなんて高校生としては生意気ね」
K「・・・・・・それでね、僕は真夜中に目が覚めたんだ」
U「・・・・・・」
K「目が覚めて、僕はその子の胸に触れようとしたんだ」
U「胸って、おっぱいね」
K「僕はその子の右側で寝ていた。で、半身を起こして右腕を伸ばしてその子の左の胸に触れようとしたんだ」
U「・・・・・・」
K「そのときだ。その時、とんでもないことが起こった」
U「えっ、誰か来たの? その子の親とか」
K「違う、そんなんじゃない。触れられなかったんだ」
U「何? どういうこと?」
K「僕の右腕はなんの抵抗もなく、その子の身体に入り込んでいったんだ」
U「・・・・・・」
K「ズルズルと、僕の右腕はその子の胸から、その子の身体にめりこんでいった」
U「ふっ、ふうん」
K「僕は慌てもしなければ、焦ることもなく、ゆっくりその子から右腕を抜いた」
U「・・・・・・」
K「そのあと、最初に来たのは恐怖だった」
U「まっ、まあこわかったんでしょうね」
K「・・・・・・すごく異様な感じの中、僕は悟ったんだ」
U「・・・・・・」
K「ああ僕はこの子とは違う宇宙にいるんだな、『ここ』にいるんじゃなかったんだって」
U「・・・・・・それ、なんかブキミね」
K「そう、僕のいる場所が崩れていった、そんな気がしたんだ」
U「うーんなるほど、それで、あなたは今でもこの宇宙の外にいるの?」
K「わからない。でもね、君が好きなんだ」
U「ありがとう、ちょっとうれしいかな?」
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ケイはセンター・オブ・ジ・アースに乗ったあと、
海底2万マイルにも乗って、それからディズニー・シーを出ました。
ケイが部屋に戻ると、ユウは可愛いパジャマを着て、
ぐっすり眠っていました。
ケイはその頬に右手で触れてみました。
そして、あたたかさにほっとしてから、
ゆっくりユウの唇にキスしました。