物語とナラティヴ

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未来へのモノ-ガタリ(21):ミッキーの存在 - 野中

2025/05/11 (Sun) 10:54:05

ユウ(U)とケイ(K)はディズニーランドで
二人でマークトウェイン号に乗り、アメリカ河の風景を
眺めながら話をしています。
涼風の吹く初夏の昼下がりでした。
でもケイは何だか真剣な雰囲気でした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
K「ねえ、ミッキーってさあ、ほんとに居るのかな?」
U「当たり前よ、ミッキーが居なければディズニーじゃないわよ」
「でもさ、それって単なる『お約束』じゃないのかな」
「ええっケイさんってバカなの。ミッキーは居るのよ」
「どこに?」
「わたしたちの心の中に」
「ていうことはさ、現実にはいないんだ」
「やっぱりケイさんはバカね。心がいると感じるから現実にいるのよ」
「ということは、アパートの隣の、ぼくたちに嫌味を言うあの女の人は?」
「うーん、まあ居てほしくはないけど、ミッキーと同じでやっぱり居るわ」

「じゃあさ、僕たちにとって『現実』って何?」
「それってさ、ケイさん、あなたはミッキーを疑ってるわけ?」
「いやだってさ、隣のおばさんとミッキーが同じ仕方で『居る』わけはないだろ」
「はははっ、だからあなたはバカなのよ」
「『存在する』っていうことが僕には分かってないっていうこと?」
「そうよ。そういうこと」
「わからないよ」
「ええとじゃあ・・・・・・『コンチキヤマ・カネカエセ』っていうタレント知ってる?」
「えっ、『コンチキヤマ・カネカエセ』・・・・・・知らないな」
「まあ、知らないのは当然ね、あたしが今考えたばかりの人だから」
「うわっ、テキトーかい。そりゃしらなくて当然だよ」
「でもそのひとはもうあなたの中に存在してる」
「えっ、何を言ってるんだ?」
「だってさ、ケイさんもう『コンチキヤマ・カネカエセ』という名前知ってるよね」
「まっ、まあね」
「知ってるっていうことは『存在する』っていうことなのよ」
「何を言ってるの?」
「だからね、あなたの頭の中に『コンチキヤマ・カネカエセ』さんっていう
フォルダがもうできてしまっているのよ。そういう仕方で、
『コンチキヤマ・カネカエセ』さんは、存在してるの。
もちろんそのフォルダには名前がついてるだけで、
性別も年齢も、あらゆるデーターは空なんだけど」
「じゃあ聞くけど、君の中に『コンチキヤマ・カネカエセ』さんは
存在してるの」
「もちろんよ。ケイさんとの対話のための仮想的人物としてね」
「・・・・・・」
「『存在する』ってそういうことなの。空間の中で物理的に質量を持って
居るわけじゃないの」
「なるほど。じゃあさ、その言い方だと『科学』は間違ってるの?」
「それ、前にケイさんが言ってたじゃない。科学は思惟を説明できないって。
なぜなら科学自体が思惟の産物だからって」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二人はアメリカ河の風を頬に感じながら、
そのあとも話し続け、そして溜息をついて、
笑い合いました。
そう、ミッキー・マウスは存在するのです。
もちろん、となりのオバサンも『コンチキヤマ・カネカエセ』さんも。

ひとしきり語り合ったあと、
二人は夕食に予約してあったイースト・サイド・カフェで
パスタを食べ、とてもいい気分でランドを後にしました。

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