物語とナラティヴ

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未来へのモノ-ガタリ(28): アクアスフィア - 野中

2025/06/12 (Thu) 20:56:47

ユウ(U)とケイ(K)はディズニーシーの
アクアスフィアのある広場にいました。
地球が表面に水をたたえて、
ゆっくりと回転しています。
ケイは、ユウに語り掛けます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
K「僕たちはいま宇宙に居るのかな」
U「ちがうよ」
「えっじゃあどこに居るの?」
「この地球儀は、あたしたちがいる場所なんだ」
「って、いう事は?」
「あたしたちが住んでるここは、こんなにも美しいの」
「ふうん、・・・・・・いや、よく分からないよ」
「あたしたちは、地球にしか居られない生命体ってこと」
「まあ確かに、僕たちはふつうのままでは火星人になれないからね」
「そう、だね確かに人間は、ほぼ一気圧、酸素20バーセント
窒素80パーセントの大気の下でないと生き続けられない」
「そうよ、生身で地球表面以外の所には居られない」
「生きて裸眼で宇宙をみるなんて不可能だな」
「つまり、あたしたちが『宇宙は美しい』なんて考えるのは・・・・・・」
「そう、宇宙はそれ自体が地獄なのさ」
「なんかちょっと息がつまるね。地獄に取り囲まれてるなんて」
「違うよ。それだけ地球が美しいってことなのさ」
「・・・・・・」
「ディズニー映画のさ、ウォーリーって見たことある?」
「うん」
「ロボットのウォーリーの友達、憶えてる?」
「ええ。ゴキブリさんよ」
「僕たちの回りって、生命で満たされてる」
「そうね」
「その生命の一つ一つが、本当にすべて貴重なんだ」
「うん、あの映画でゴキブリさんの可愛さったらなかったわ」
「まあ、うちの台所に居たら、追い出すけどね」
「ふふっ、そうね」
「あっ、気を付けなくちゃ」
「なあに」
「ゴキブリ亭主にならないようにしなくちゃ」
「いいよ、あたし。ケイさんならゴキブリ亭主でも」
「いや、そんな・・・・・・僕自身がイヤだよ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二人は、ちょっと大声で笑い合いました。
そしてアクアスフィアを背景にして、二人顔を近づけて
記念写真を撮りました。

未来へのモノ-ガタリ(27):祈りの空間 - 野中

2025/06/10 (Tue) 10:01:01

ユウ(U)とケイ(K)はディズニーランドの
パートナーズ像の前に来ています。
記念撮影をするゲストたちの後ろで、
ひっそりと並んでお祈りをしていました。
その後で、ユウは小声でケイに語り掛けます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
U「ケイさん、何を祈ってた?」
K「いや、祈るって言うより感謝だよ」
「どんな感謝?」
「ユウに出会えたこと」
「ふふっ。あたしも同じ」
「ははっ・・・・・・ところでさ」
「なあに」
「ずっと思ってたんだけど、祈るってなんだろう」
「なあにそれ」
「僕たちはいま、ミッキーとウォルトのパートナーズ像に向かって
祈ってるけど、別にそこにミッキーがいるわけじゃない」
「まあ、そうよね」
「僕たちが祈る時、無意識に目の前の空間を飛び越えて
それより高い次元の空間を見ている」
「まあそうね。見えないけど想定してるわね」
「つまりさ、祈る人はその時点で、三次元空間プラス時間という
『合理的空間』を離れているっていうことさ」
「なんか難しそうね」
「難しくないさ。世界が三次元的だっていうのは、
単なる決め事にすぎないんだ。ニンゲンが勝手に決めた」
「じゃあ、世界は何次元なの?」
「わからない。でも分からないことは当たり前だよ」
「そうなの」
「たとえばさ、僕たちが平面の中に居る存在だとするだろ」
「うわっ、何だか不便そうね」
「そのとき僕たちは、下にもぐるとか、上を跳び越すなんて
想像すらつかないだろ」
「まっ、まあそうでしょうね」
「だろ、それと同じで、僕たちには三次元的なものしか見えないから
世界がどうしても三次元的なものだってみえてしまう。
そして『人間には三次元的にしか見えないから世界は三次元だ』
という、おそろしく身勝手な考えに至ってしまう」
「なるほど。それが『合理主義』ってやつね」
「・・・・・・っていうことは」
「なんだい」
「あなたがあたしを好きなのも、『合理主義』じゃないことよね」
「そっ、そうだよ。僕は君を、純粋な意味で好きなんだ」
「・・・・・・・あたしも・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
話し終わった二人は、改めて、ミッキーとウォルトに
深い祈りを捧げました。

未来へのモノ-ガタリ(26): ガジェットのコースター - 野中

2025/06/05 (Thu) 11:07:45

ユウ(U)とケイ(K)はディズニーランド・トゥーンタウンの一番奥にある、
ガジェットのコースターに乗ることにしました。
約40分待ちとあります。
2人は待つことにしました。
待ちながらユウは、小声でケイに話しかけました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
U「ねえ、さっき言ってた合理主義の話を聞かせて」
K「あれっ、もう合理主義は忘れたんじゃなかったっけ」
「まあ、そうなんだけど、なんか気になるのよ」
「うーん。『忘れてしまう』以外の方法で合理主義を乗り越えるのは・・・」
「えっ、大変なの?」
「そうだよ。何て言っても合理主義は僕たちの社会に沁み込んでる」
「そうなの?」
「ああ。人間こそが特別だって言う思い込みさ」
「何かすごく傲慢ね」
「ああ傲慢だよ」
「それってディズニーじゃ通用しないわね」
「うん、ディズニーではミッキーたちは『ともだち』だからね」
「やっぱりディズニーが正しいわ」
「そう。合理主義なんてだから一回、忘れた方がいい」
「どういうこと?」
「合理主義は切断の思想なんだ」
「どういうこと?」
「人間だけが特別だって、他の生物と切り離したのさ」
「バカなんじゃない」
「まあ、そのころって宗教の影響が強かったからさ」
「どういうこと」
「人間に自信がなかったのさ。自分たちは本当に特別なんだろうかって」
「つまり・・・・・・ニンゲンだけが特別だっていう感覚がほしかったのね」
「そうそう、それが合理主義なんだ」
「どういうこと?」
「ええと・・・・・・ニンゲンは疑うことができる」
「まあ、そうよね」
「ニンゲンはすべてのものを疑うことができる」
「まあ、そうかな」
「でも、そのウタガッテイル自分の存在を疑うことはできない」
「まあ一理あるわ」
「つまり、『自分は疑える、だから自分は存在する』」
「ふうん」
「納得した?」
「うん、半分」
「半分って?」
「だって自分の存在なんてそんな面倒なことしなくても実感できるし」
「そう、そうなんだ。でも今から400年前の人たちは、人間が特別なんだ
人間だけがこうやって自分の存在を確認できるんだ。
人間ってすごいと納得しちゃったんだ」
「でも、隣のおばさんが飼ってるネコちゃんなんてズル賢くて、
いろいろ疑っているみたいに見えるわ」
「そうなんだよね。でも人々は合理主義に納得した」
「ふうん、結構バカ」
「それで人間は『万物の霊長』なんて思うようになった」
「あっ、それで家畜を飼って殺して食べていいって・・・・・・」
「そう。動物たちにとって地獄のような世界が始まったんだ」
「ふーん、なるほどね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ようやくガジェットのコースターの順番が回って来ました。
二人は登って下って振り回され、はしゃいで、ゆさぶられ
歓声を挙げて、そして止まりました。
二人は何も言わず、互いの眼を見て、
微笑み合いました。

未来へのモノ-ガタリ(25): シンデレラ城 - 野中

2025/06/02 (Mon) 08:43:50

ディズニーランドにて。
チップとデールに挨拶してから、
ユウ(U)とケイ(K)はシンデレラ城を左に見ながら
トゥーンタウンにむかっています。
歩きながらユウは、ケイに話しかけました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
U「ねえ、さっきのニンゲンは動物よりエライっていうのは・・・・・・」
K「うん、それは間違いなんだ」
「でもさ、動物がニンゲンを襲ったら、その動物は害獣扱いでしょ」
「そうだね、少なくともディズニー以外では、そうなってるよね」
「チップやデールは大スターなのに、どうして?」
「うーん。それは合理主義の影響なんだ」
「なにその合理主義って?」
「人間中心の考え方だよ」
「何それ」
「合理主義が世界に定着してから、だいたい200年ぐらいだね」
「で、それ以降はニンゲンだけが特別になったの?」
「そうみたいだね」
「なんかすごく腹が立ってきたわ。その合理主義っていうのが、
好きな時に動物たちを殺して食べていいっていう論拠なのね」
「おかしいよね」
「うん。動物を食べちゃいけないっていうのは極端だけど、
食べる時に、一定の敬意は必要だし、生命に対する尊敬
というか哀惜の念は必要だと思うよ」
「『やれ打つなハエが手をする足をする』ってやつね」
「小林一茶だね。そうそうそういう感覚」
「つまり・・・・・・ニンゲンだけが特別だっていう感覚がおかしいのね」
「そうなんだ。だから合理主義はおかしいんだ」
「ふふっ、簡単じゃない」
「ええ、何が簡単なの」
「忘れればいいの。合理主義なんて忘れればいいのよ」
「なるほど」
「さあ、じゃこれから合理主義を忘れに行きましょ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ケイとユウはトゥーン・タウンの入り口にやって来ていました。
二人はそこを入って、チップとデールのツリーハウスで
しばらくはしゃいでいました。

未来へのモノ-ガタリ(24): チップとデール - 野中

2025/05/25 (Sun) 22:33:47

ディズニーランドのゲートを入ってすぐの広場に
チップとデールがやってきています。
ユウ(U)とケイ(K)は彼らと写真を撮ろうと、
列にならんでいました。
そのときにユウは、ケイに話しかけました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
U「ところでさ、ケイさんはチップとデールだと、デールが好きなのよね」
K「まあ、そうだね。僕の中ではデールの方が大事なキャラクターだよ」
「どうしてなの?」
「うーん、うまく言えないけどさ・・・・・・」
「なんとか説明してみて」
「そうだな。ミッキーとドナルドで考えて見ようか」
「何それ」
「チップはミッキー的で、デールはドナルド的なのさ」
「それで?」
「ディズニーには、ミッキー的なのは一人でいい」
「なるほど。たしかにデールの方が個性的よね」
「うん。そういう気がする」

「ところでさ、動物はニンゲンに劣ってるの?」
「いや、そんなことないよ。動物たちの方がむしろ正直に幸福に生きてる」
「そうよね。あたしもそう思う」
「ディズニーもそのことに気がついていたんだよ」
「じゃあ、ここにいて幸福になれるのはそのせい?」
「そう、ここディズニーではニンゲンも素朴で幸福でいられる」
「ふふっ・・・・・・あっそろそろ順番よ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ユウとケイは一緒にチップとデールに写真に納まりました。

未来へのモノ-ガタリ(23): 生きる - 野中

2025/05/19 (Mon) 15:00:42

ユウ(U)は時々不安になります。
ケイ(K)はこのままで生きられるわけはない、
どうしてもそんな気がしてきてならないのです。
それでユウは、ケイに話しかけました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
U「ねえ・・・・・・十年後、あたしたちどうしてると思う?」
K「うーん。そんなに先の事、考えてないな。まあ確実なことは・・・」
「確実なことは?」
「もし二人とも生きていたら、僕は君の事を好きでいるということだな」
「じゃあ、あたしが生きていればさ、あなたも生き続けているっていうこと?」
「もちろんだよ」
「そのときあたしに、別に好きな人ができていたとしても?」
「うーん。あんまり考えたくないけどその時も君をすきなままだね」
「そういうあなたが邪魔だったとしたら?」
「大丈夫さ。僕はひっそりと君を見守りながらどこかで生き続ける」
「どうして?」
「きみを好きだっていうことが僕の生きる意味だからさ」
「・・・・・・」
「でもそんな僕が、生きていることが不快だとしたら・・・」
「・・・・・・いいの。もうそれ以上は言わないで。ごめんなさい」
「何を謝ってるの?」
「ごめんなさい。あなたを試すつもりはなかったの」
「ええっ」
「あたしも、あなたのこと大好きなの」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ユウは泣きながらケイに抱き付いてキスをしました。

未来へのモノ-ガタリ(22): 「他人」とディズニー - 野中

2025/05/15 (Thu) 11:26:40

ユウ(U)とケイ(K)は並んで電車に乗っています。
ディズニーランドを出た後、イクスピアリで
のんびりしていたので、思ったより遅くなり、
帰りの電車は空いていました。
二人はひそひそと話をしています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
U「ねえ・・・・・・前に話してた、女の人の事教えて」
K「えっ、二人で寝ていて、夜中に気づいたら僕の腕が相手の身体に
めりこんでしまった、その相手?」
「そうそう、その女の人」
「うーん・・・・・・いまあんまり思い出したくないな」

「どういうこと、付き合ってたんでしょ?」
「でもさ、とても同じ宇宙にいたとは思えないんだよ」
「何それ? 高校の頃ずっと一緒にいたんでしょ?」
「まあそうだけど、よその人だったんだ」
「よその人って・・・・・・他人っていうこと」
「まあ、そうだね」
「なんかずるいね。好きだったんでしょ?」
「うーん。よく覚えてないな」
「それで、どうなったの?」
「どうなったって?」
「別れ方よ。どんな形で別れたの?」
「なるほど・・・・・・彼女にべつの好きな人ができて」
「ふーん。で、ケイさんはジタバタしなかったの?」
「したよ。死のうと思ったさ」
「うっ・・・・・・」
「でもさ、違う宇宙に居る人に拒まれて死ぬのはダメだと思ったのさ」
「ふーん」
「それでね、突然、何が正しいのか考え始めたんだ」
「・・・・・・」
「その子と僕が違う宇宙に居るってどういうことなのか」
「・・・・・・それって少なくとも科学的じゃないよね」
「・・・・・・そうなんだ。それで思ったさ。科学なんて、単なる現象の説明に
すぎないものだって」
「なにそれ」
「科学では宇宙の外のことを説明できない」
「まあ、そうよね」
「でね、その女の子は僕の宇宙の外側にいたんだ」
「ふーん」
「言い方を変えれば、僕はその子をきっと、好きじゃなかったんだ」
「うーん」
「僕はずっと僕の宇宙の内側に居る人を捜していたんだ」
「・・・・・・」
「それがきみだよ」
「まあ、あたしもそんな気がしてるけど」
「僕はディズニー・パークも好きだ。ディズニーに居ると、
自分の宇宙に居るんだと感じるんだ」
「あたしもそうね。ディズニーに居ると落ち着く」
「それでね、そういうきみがそばに居ると、もうそれだけで
いいっていう気持ちになるんだ。僕の宇宙の真ん中に
きみがいるんだ」
「・・・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二人は部屋に着くとゆっくりと
抱き合ってキスしました。

未来へのモノ-ガタリ(21):ミッキーの存在 - 野中

2025/05/11 (Sun) 10:54:05

ユウ(U)とケイ(K)はディズニーランドで
二人でマークトウェイン号に乗り、アメリカ河の風景を
眺めながら話をしています。
涼風の吹く初夏の昼下がりでした。
でもケイは何だか真剣な雰囲気でした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
K「ねえ、ミッキーってさあ、ほんとに居るのかな?」
U「当たり前よ、ミッキーが居なければディズニーじゃないわよ」
「でもさ、それって単なる『お約束』じゃないのかな」
「ええっケイさんってバカなの。ミッキーは居るのよ」
「どこに?」
「わたしたちの心の中に」
「ていうことはさ、現実にはいないんだ」
「やっぱりケイさんはバカね。心がいると感じるから現実にいるのよ」
「ということは、アパートの隣の、ぼくたちに嫌味を言うあの女の人は?」
「うーん、まあ居てほしくはないけど、ミッキーと同じでやっぱり居るわ」

「じゃあさ、僕たちにとって『現実』って何?」
「それってさ、ケイさん、あなたはミッキーを疑ってるわけ?」
「いやだってさ、隣のおばさんとミッキーが同じ仕方で『居る』わけはないだろ」
「はははっ、だからあなたはバカなのよ」
「『存在する』っていうことが僕には分かってないっていうこと?」
「そうよ。そういうこと」
「わからないよ」
「ええとじゃあ・・・・・・『コンチキヤマ・カネカエセ』っていうタレント知ってる?」
「えっ、『コンチキヤマ・カネカエセ』・・・・・・知らないな」
「まあ、知らないのは当然ね、あたしが今考えたばかりの人だから」
「うわっ、テキトーかい。そりゃしらなくて当然だよ」
「でもそのひとはもうあなたの中に存在してる」
「えっ、何を言ってるんだ?」
「だってさ、ケイさんもう『コンチキヤマ・カネカエセ』という名前知ってるよね」
「まっ、まあね」
「知ってるっていうことは『存在する』っていうことなのよ」
「何を言ってるの?」
「だからね、あなたの頭の中に『コンチキヤマ・カネカエセ』さんっていう
フォルダがもうできてしまっているのよ。そういう仕方で、
『コンチキヤマ・カネカエセ』さんは、存在してるの。
もちろんそのフォルダには名前がついてるだけで、
性別も年齢も、あらゆるデーターは空なんだけど」
「じゃあ聞くけど、君の中に『コンチキヤマ・カネカエセ』さんは
存在してるの」
「もちろんよ。ケイさんとの対話のための仮想的人物としてね」
「・・・・・・」
「『存在する』ってそういうことなの。空間の中で物理的に質量を持って
居るわけじゃないの」
「なるほど。じゃあさ、その言い方だと『科学』は間違ってるの?」
「それ、前にケイさんが言ってたじゃない。科学は思惟を説明できないって。
なぜなら科学自体が思惟の産物だからって」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二人はアメリカ河の風を頬に感じながら、
そのあとも話し続け、そして溜息をついて、
笑い合いました。
そう、ミッキー・マウスは存在するのです。
もちろん、となりのオバサンも『コンチキヤマ・カネカエセ』さんも。

未来へのモノ-ガタリ(20):ライン - 野中

2025/05/06 (Tue) 07:28:32

ケイ(K)は一人でセンター・オブ・ジ・アースの待ち列に
並んでいました。ユウ(U)と一緒に来るつもりが、
ユウの仕事場で、突発的に用事ができ、
ケイは仕方なく一人で来たのです。
ケイは暇だったのでユウにラインを送りました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
K「いま、センター・オブ・ジ・アースにならんでるよ」
U「うらやましいな。あたしはようやく仕事おわったとこ」
K「じゃあ、今からでも来る?」
U「うーん、でもやめとく。疲れたよ。帰って寝とく」
K「じゃあ、このあと2万マイルに乗って、すぐ帰るよ」
U「ふうん」
K「ねえ・・・・・・変な話、してもいいかな」
U「ええっ、・・・まあいいけど」
K「ええと・・・・・・怒らないで聞いて欲しい」
U「何それ、あたし怒るの?」
K「いや・・・・・・・そうだ。僕にとって確実なことは・・・・・・」
U「あたしを好きだって言う事?」
K「そう。僕はきみが好きだ。宇宙がどうなってもそれは変わらない」
U「・・・・・・わかった。じゃあ話して」

K「高校生のころさ」
U「ちょっと前なのね」
K「僕は一人の女の子と裸で寝ていた。その子に関わり出したのは向こうから声を掛けられてからだ」
U「裸で寝るなんて高校生としては生意気ね」
K「・・・・・・それでね、僕は真夜中に目が覚めたんだ」
U「・・・・・・」
K「目が覚めて、僕はその子の胸に触れようとしたんだ」
U「胸って、おっぱいね」
K「僕はその子の右側で寝ていた。で、半身を起こして右腕を伸ばしてその子の左の胸に触れようとしたんだ」
U「・・・・・・」
K「そのときだ。その時、とんでもないことが起こった」
U「えっ、誰か来たの? その子の親とか」
K「違う、そんなんじゃない。触れられなかったんだ」
U「何? どういうこと?」
K「僕の右腕はなんの抵抗もなく、その子の身体に入り込んでいったんだ」
U「・・・・・・」
K「ズルズルと、僕の右腕はその子の胸から、その子の身体にめりこんでいった」
U「ふっ、ふうん」
K「僕は慌てもしなければ、焦ることもなく、ゆっくりその子から右腕を抜いた」
U「・・・・・・」

K「そのあと、最初に来たのは恐怖だった」
U「まっ、まあこわかったんでしょうね」
K「・・・・・・すごく異様な感じの中、僕は悟ったんだ」
U「・・・・・・」
K「ああ僕はこの子とは違う宇宙にいるんだな、『ここ』にいるんじゃなかったんだって」
U「・・・・・・それ、なんかブキミね」
K「そう、僕のいる場所が崩れていった、そんな気がしたんだ」
U「うーんなるほど、それで、あなたは今でもこの宇宙の外にいるの?」
K「わからない。でもね、君が好きなんだ」
U「ありがとう、ちょっとうれしいかな?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ケイはセンター・オブ・ジ・アースに乗ったあと、
海底2万マイルにも乗って、それからディズニー・シーを出ました。
ケイが部屋に戻ると、ユウは可愛いパジャマを着て、
ぐっすり眠っていました。
ケイはその頬に右手で触れてみました。
そして、あたたかさにほっとしてから、
ゆっくりユウの唇にキスしました。

未来へのモノ-ガタリ(19): 出発 - 野中

2025/05/04 (Sun) 05:28:43

ケイ(K)とユウ(U)はディズニーシーの地球儀
アクアスフィアを眺めながら、
話をしています。
ケイの声にはこれまでよりずっと張りがあります。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
K「君は、『ハイスクール・ミュージカル』を見たことある?」
U「うん、もちろん」
「あのドラマでの最初の唄、憶えてる?」
「えーと、スターツ・オブ・サムシング・ニュー、よね」
「今日の僕は、あのときのトロイの心境なんだ」
「なにそれ」
「僕の中に何かが始まるみたいだ」
「ふうん、おもしろそうね」

「僕はこれまで、いろんなものを背負ってきてしまった」
「どんなもの?」
「たとえばさ、僕はいま働いてる」
「うん。そうね」
「でもさ、それって『お金』に縛られてるってことだよね」
「まあそうね」
「それってさ、でも、僕の大切な事じゃない」
「じゃあ、もうシゴトやめるの?」
「そうじゃない」
「じゃあ、シゴト続けるの?」
「うーん、そうでもない」
「どういうことなの」
「すべてをゼロから考え直してみたいなと思ってる」
「ふうん。でもそれってものすごく不安定ね」
「大丈夫さ」
「そうかなあ」
「うん。僕はきみが好きだ。何があってもそこだけは変わらない」
「ありがとう。あたしも好きよ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
青い5月の空の下、二人はずっとアクアスフィアを眺めていました。

未来へのモノ-ガタリ(18): ゼロから - 野中

2025/05/02 (Fri) 13:34:52

ユウ(U)とケイ(K)は手を繋いで、
ディズニーランドのパートナーズ像の前に
並んで立っています。
上空には5月のくっきりとした青い空が広がっています。

ケイはそのままゆっくりと話し始めます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
K「ええとねえ、ユウ」
U「ケイさん・・・・・・なあに?」
「僕はいったん、ゼロになる」
「うんうん」
「だけどそのゼロは、ふつうのゼロじゃない」
「なにそれ」
「そのゼロにはきみが居るんだ」
「ふふっ」

「僕はきみを好きだ。きみが好きだから世界があるんだ」
「そこがあなたのゼロの点なの?」
「そうだよ」
「わかった。あたしもがんばるね」
「ありがとう」
「ふふっ、がんばるっていってもほんとはよくわかんないけど」
「いっしょに居てくれるだけでいいのさ」
「なんかすごくうれしいな」
「きみに出会えてよかった」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
二人はそれまでよりずっと強く手を握り合いました。

未来へのモノ-ガタリ(17): ケ-プコッドの出会い - 野中

2025/04/29 (Tue) 06:59:25

ケイ(K)とユウ(U)は数年前に出会いました。
秋の終わりのディズニーシーでの話です。
ケイは大学2年生、ユウは大学1年生でした。
その日、ケイはアメリカン・ウォーターフロントから
ロストリバーデルタに向かって、ゆっくりと歩いていました。
ユウはその逆に、ロストリバーデルタからアメリカン・ウォーター
フロントを目指していたのです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ケイは歩きながらケープコッドの灯台を見ました。
アメリカ東部のひなびた漁村にあるというその灯台の姿は
ケイの気持ちを、すうっと落ち着かせました。
そしてその視線をそのまま前方に移した瞬間、
ケイは、そこに運命の人がいるのを見てしまいました。

ユウは右手に見える灯台を見て、
一瞬、心がなごみました。その灯台がそこにあることが
なぜか嬉しいことのような気がしました。
そしてその視線をそのまま前方に移した瞬間
ユウはそこに運命の人がいるのを見てしまいました。

二人は同時に思いました。
「えっっ、何だろう・・・あっ、見つけたんだ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

未来へのモノ-ガタリ(16): ケイの位相 - 野中

2025/04/21 (Mon) 16:33:40

ケイ(K)はあわてずにいました。
大事なことは、落ち着いてゆっくりと一歩一歩
進んで行くことだと感じたからでした。
それはもちろんユウ(U)の微笑みに支えられていたわけですが。
初夏のある日、ケイは部屋で
のんびり話しはじめました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
K「ねえ、ユウ」
U「なあに?」
「つぶやいてもいいかな・・・・・・」
「まあ、聞いてるよ」

「僕には二つのことしかわからない」
「一つは分かるわ。ディズニーに居たいっていうことよね」
「ああ、そうだ。僕にとってはディズニーは大切さ」
「それで? もう一つは?」

ケイは一瞬、口をつぐみました。それでも言葉にしておくべきだと
決心して、大きく深呼吸してから話を継ぎます。

「僕はきみを好きだ」

ユウは目を見開いた後、ゆったりすごく優しい顔になって微笑みます。
ケイは硬い表情のまま言います。

「きみが好きだから、生きていられるんだ」

ユウは小さくタメイキをつきます。笑ったまま。

「僕にとっては、生きることの第一歩が君を好きだっていうことなんだ」

「ええっ? それで第二歩がディズニー?」
「まあそうだね」
「あたしの方が、ディズニーより前?」
「もちろん、そうだよ」
「そんなにあたしが好きなの?」
「うん、そうだよ。きみが好きだから世界があるんだ」

ユウはケイに手を伸ばします。
二人は抱き合い、キスしました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

未来へのモノ-ガタリ(15): 恋の時 - 野中

2025/04/16 (Wed) 21:50:42

ケイ(K)はぎりぎりまで年休を取って、
何とか職場に復帰しました。
そしてユウ(U)と一緒にディズニーシーに行き、
夕闇の中、コロンビア号の最上段のデッキに行って
小さな声で話しはじめたました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
K「ねえ」
U「何?」
「キスしてもいいかな?」
「うん」

他に誰もいないデッキで、ケイとユウは抱き合ってキスしました。
ゆっくり、静かに。
そして、抱き合ったまま、話をしました。

「もう少ししたら、花火を見に、人が来るかもね」
「かまわないわよ。こうしていたいんだから」
「そうだね」
「あっでも、やっぱりふつうにしよう」
「どうして」
「花火見に来てる人が、楽しめなかったらいやだから」
「なるほど」

二人は横に並びました。けれどもケイの右手とユウの左手は、
しっかり繋がれていました。

「僕はすごく不完全でいい加減なヤツなんだ」
「そうなの?」
「うん、そうだよ。でもひとつだけちゃんとしていたいと思ってる」
「なあに、それ」
「うまくいえないんだけど」
「でも、ちゃんとコトバにしておかないといけないこともあるわ」
「ああ、そうだね」
「うん、そうだよ」

「きみがすきなんだ」
「何よそれ」
「僕は今の所、何も分からない。でも僕の中で何かが
始まりつつあるっていうことはわかる」
「ふうん」
「でも何がはじまろうが、このことははっきりさせて置かないと」
「なあに」
「僕はきみが好きだ。今の僕にはそれしか分からないけど」
「ありがとう」
「僕が今、生きているのは、きみのおかげだ」
「ちょっとうれしいな」
「僕は新しいスタートを切った」
「うん、そうみたいね」
「そのスタート・ラインはきみなんだ」
「どういうこと?」
「きみが好きだっていうことが、新しい僕の原点さ」

気づくと、ふたりの回りには、何人ものゲストの人々が
集まって来ていました。
しばらくすると音楽が鳴り、
花火が始まりました。
二人は花火が終わり、コロンビア号を降りてからも、
ぎゅっと手を繋ぎつづけていました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

未来へのモノ-ガタリ(14): センター・オブ・ジ・アース - 野中

2025/04/13 (Sun) 03:29:45

きっかけはセンター・オブ・ジ・アースでした。
ケイ(K)は不調のままユウ(U)と一緒に
ディズニーシーに行き、センター・オブ・ジ・アースに
乗ったのですがそこで、回復へのきっかけをつかんだのです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
地底探索車に乗った二人は、地底のさまざまな光景を
見て回ります。そして突然、ぐいぐいと上昇し始め、
そのあと一気に下降しました。

U「ケイ、大丈夫?」
K「ああっ、そうか」
「何? 何かわかったの?」
「うん。一瞬でいろんなものが爆発した」
「ええっ? 何が爆発したの?」
「うーん。僕自身かな」
「なにそれ?」
「僕は地底に居た、そしていま、地上に戻って来た」
「そうなの? ・・・・・・それ、ひょっとしてすごいこと?」
「うん、そうだよ。多分すごいことが起こった」
「ねえ、あたしの手を握って」

ふたりはそれからは黙って手をつないだまま
地底探索車を降りました。
その手を伝わるあたたかさに、
ケイは少しずつうれしさがこみあげてきました。
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未来へのモノ-ガタリ(13): Kの底の底 - 野中

2025/04/07 (Mon) 21:57:39

ケイ(K)は落ち込み続けています。
ユウ(U)はでも、そろそろ底に来ていると、
そしてそのことで、何だか希望が持てそうな
気がしはじめていました。
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ディズニーから帰る途中の電車の中で、
ケイは何だか苦しそうです。
ユウはゆっくりと話しかけました。

U「ケイ、大丈夫?」
K「うん、いまが最低な気がする」
「何それ、最低って・・・」
「最低は最低だよ」
「ふうん・・・、ということはこれから少しずつよくなっていくのね」
「うーん」
「なあに?」
「そんなもんかな」
「そうなのよ。今が最低なら、これからは良くなるしかないの」
「そうかな。そうかも」
「うん、そうだよ。あたしを信じなさい」
「うん。そう信じるよ」
「ねえ、あたしの手を握って」
「ああ、これでいいかな」
「あたしを信じて、最低から脱け出そうよ」
「うん、できる気がする」
「あたしもケイさんを信じてるから」
「ああ。ありがとう」

ふたりは黙って手をつないだまま
電車に乗り続けていました。
その手を伝わるあたたかさに、
ケイは少しずつ少しずつ、勇気がわいてきました。
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未来へのモノ-ガタリ(12): Kとエレパ - 野中

2025/03/30 (Sun) 15:30:22

ケイ(K)が相変わらず落ち込んでいるので、
ユウ(U)は無理矢理
ディズニーランドのエレクトリカルパレードに
連れて行きました。
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場内の光が落とされ、暗い中、青いフロートがやってきます。
ブルー・フェアリーです。映画「ピノキオ」に出て来る妖精です。
彼女を先頭に、光輝く物語の饗宴が始まります。
人々は息を呑んで光の魔術の世界に没入しています。

U「ケイ、すごいね」
K「ああ、何だか涙が出て来た」
「ふうん」
「これはなんというか」
「なあに?」
「確実な幸せだね」
「そうね」
「それにさ、となりに君がいる」
「えっ?」
「ははっ、タートルトークのカメさんだよ」
「何それ?」
「ははっ、えーと・・・」
「なになに」
「最高だぜ」

気がつくとユウも涙を流していました。
二人は決して短くないエレパの時間
ひたすら泣いていました。
そして満ち足りた気分でいました。

未来へのモノ-ガタリ(11): Uの励まし - 野中

2025/03/24 (Mon) 02:38:19

ケイ(K)が落ち込んでいるので、
ユウ(U)が励ましています。
アラビアン・コースト前の売店で買った、
カレー味のポップコーンを齧りながら。
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二人は朝からディズニーシーに来ていたんですが、
ケイはずっと、タメイキばかりついています。
ファンタジー・スプリングスあたりをぐるぐる
回ってみたのですが、ケイ(K)の表情は暗いままです。
ユウ(U)はカレー味のポップコーンを買って
とりあえずケイに差し出しました。

U「ケイ、これでも食べようか」
K「あ、ありがとう。久しぶりだな」
「カレー味、なんかなつかしいよね」
「うん。たまにはこれも悪くないね」
「ところでさ?」
「なんだい」
「モヤモヤしてるの?」
「ああ、そうだね。それにイライラしてる」
「何にモヤモヤ?」
「ははっ、タートルトークのカメさんの反対だ」
「何それ?」
「ははっ、えーと・・・『最低だぜ』」
「そうね、カメさんいつも『最高だぜ』って言ってるもんね」

「あっでも、このカレー味のポップコーン」
「なになに」
「最高だぜ」

二人の足取りは、少しずつ軽くなり、
アメリカン・ウォーターフロントに着くころには
まるでスキップしているみたいに
元気になっていました。
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未来へのモノ-ガタリ(10): Kの不調 - 野中

2025/03/19 (Wed) 16:01:27

ケイ(K)が何だか落ち込んでいます。
不調のようです。
舞浜のエクスピアリのフードコートで「へたって」いるので
ユウ(U)がなぐさめています。
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二人は朝からディズニーシーに来て、並んでいたんですが、
ケイが、入場直前に、入りたくないと言い出して、
とりあえずエクスピアリにやって来たのです。
軽い食事のあと、話し合います。

U「大丈夫、ケイ、調子悪そうね」
K「うん。今日はいいんだ。でも明日からのことを考えたらさ」
「それって、会社のせい?」
「ああそうだね。会社に行きたくない」
「やなことでもあったの?」
「ああ、ミスばっかりさ」
「文句言われるの?」
「うーん、そうでもないかな。指摘されるだけ」
「もうそろそろ、丸二年だね」
「ああ。そうだね。君はそろそろ一年だよね」
「何が辛いの?」
「うーん、何だかこのままずっと、ここに居続けるのかって」
「うんうん、ちょっと分かるよ。停滞感だよね」

「かんたんな事じゃないんだ・・・・・・いやすごく簡単な事なのかも知れない」
「何それ?」

仕方がないので、二人は「アーリーイブニングパスポート」を買って、
ディズニーランドに入ったのです。
ウェスタン・リバー鉄道に乗り、そのあと呆然と
エレクトリカル・パレード・ドリームライツを見て帰途につきました。
でも、その間、ケイの表情は暗いままでした。
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未来へのモノ-ガタリ(9):UとK、ランドで - 野中

2025/03/14 (Fri) 21:49:29

ディズニー・ランドにやってきて、
ユウ(U)とケイ(K)がもめています。
パートナーズ像の右を抜けて、
シンデレラ城に近づいたところです。
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二人は朝の7時から並んで、ようやく入場したところです。
K「えーと、どこから行こうか?」
U「そんなの決まってるわよ。まずミッキーにアイサツ!」
「それって、ひょっとして、ミッキーの家?」
「そうよ。当たり前じゃない。ほら速く。トゥーンタウンに向かうの」
「ねえ、それよりピーターパンに行こうよ。今なら20分ぐらいで行けるよ」
「ええっ、だってさ、先週、ピーターパンのネバーランドアドベンチャーに
行ったじゃない」
「あれはシーの方だろ。あれを憶えてるうちにランドの方にも」
「うーん。あとで並べばいいのよ。ともかくミッキー!」
「わかった。じゃあそのかわりお昼はカンベアのカレーだよ」
「うん。いいわ。わたしディズニーのカレー、大好きだから」
「わかった。じゃあミッキーの方に行こう」
「そう、それでね、そのあとにワッフル・カンパニーでミッキーの
ワッフル食べるの」
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二人はミッキーに挨拶してから、すぐにワールドバザールの
ワッフル・カンパニーに並んだのですが、既に長蛇の列。
ミッキーの顔のワッフルを食べた二人は、カンベアのカレーに
並ぶ気力がなくなり、結局昼食は、キャプテン・フックの
ピザパイになったということです。
でもそのあとピーターパンには奇跡的に40分で乗れて、
二人は大満足だったみたいです。


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